Column
2025年4月8日(2025年12月12日更新)
ホイアン旧市街観光の目玉といえる日本橋(来遠橋)の修復工事が昨年8月にようやく完了し、現在は再び一般公開されています。
この橋は16世紀末に日本人によって建設されたと伝えられ、ホイアンの街のシンボルとして世界遺産登録の背景にも深く関わる歴史的建造物です。
さて、ホイアン日本橋にはこの橋の象徴となっている猿と犬の像が安置されています。ユニークな外見とその組み合わせが少し不思議な気がしますが、なぜあまり似つかわしくもないこの犬猿がいるのかというと、かつて日本人が渡したといわれるこの橋が、“申(サル)の年に建設がはじまって戌(イヌ)の年に完成したから”だとされています。
それで、干支を調べてみますと、申年とは1596年、日本橋が完成した年が1598年だといわれていますが、やはりその年は戌年でした。つまり、当時この街で大きな役割を担っていたこの橋の建設には1~2年かかったということなんですね。
またもしこの説が本当だとすると、16世紀からこの犬猿の像が存在していた可能性もあるわけで、歴史の重みを感じます。
さらに一部の研究者の間では、イヌとサルは干支だけでなく「守護の象徴」としての意味もあると考えられています。サルは知恵、イヌは忠誠を表し、橋を渡る人々や街そのものを災いから守る守護的な役割を担っていたのではないかとも思えます。
完成までにかかった年月や像に込められた意味については、史料が十分に残っているわけではありませんが、こういった視点で日本橋を眺めてみると、単なる観光名所ではなく、当時の日本人町とホイアンの人々の思いや信仰、そして交流の歴史を感じ取ることができます。
ホイアンを訪れた際には、ぜひ橋の構造や装飾だけでなく、イヌとサルの像にも目を向け、その背景にある時間の流れと物語に思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。