Column
2025年1月30日
コモドドラゴンの進化を語るうえで欠かせない生物分布の境界線があり、これをウォレス線といいます。
19世紀にダーウィンらと研究を競い合った生物地理学者ウォレスが発見したもので、にわかには信じられないですが、バリ島とロンボク島を境にロンボク島から東側は陸続き、バリ島から西側はインドシナ半島まで陸続きだった歴史を持ち、そのため生物相が異なるというものです。
いまではバリ島からフローレス島まで島々が一直線に連なっているように見えるスンダ列島ですが、氷河期にはすべて地続きで、バリ島とロンボク島の間にだけ海峡があったということのようです。
地図を見ていて、とても不思議に感じるのですが、よくウォレスはこの説を自分で信じ切れたなと思うほど、本当かよと疑ってしまいますが、そのためにコモドドラゴンはオーストラリアから渡ってきたオオトカゲの亜種で、絶滅した史上最大のトカゲ メガラニアと近縁種だといいます。
ウォレス線による生物相では、有袋類としてクスクスがインドネシアには生息しています。環境適応性の問題からコアラやカンガルーは熱帯気候のインドネシアには渡ってこなかったようですが、その他ロンボク島にはいる野生のオウムなどもバリ島にはいません。飛来できる鳥ですらロンボク海峡を移動していないので、現在考えられているよりも大きな障壁があったんでしょうか。
結局オーストラリアなどでは絶滅してしまったオオトカゲが、小群島にしかすぎないコモド諸島で生き残ったのは奇跡に近いと思いますし、種として絶滅寸前の最後の最後の個体なのかもしれませんね。まあ、オーストラリアで絶滅したのは人間が原因のようですので、逆に僻地にある島嶼だったから生き残れたともいえそうです。
コモド島を観光される機会がありましたら、子ヤギを丸呑みしてしまうような最強の爬虫類であるコモドドラゴンですが、あと少しで絶滅してしまうような存在だったということも思い出してもらえたらと思います。きっと少しだけ可愛く見えてくるのではないでしょうか。